『父、帰る』


2003年度ベネチア映画祭のクランプリ受賞作品。12年ぶりに帰ってきた父親に戸惑う兄弟二人。父は息子たちを連れて釣りに出掛ける。母と祖母に育てられた兄弟に男親の威厳をもって接する父親に息子たちの心は大きく揺れる。父親に急用ができ小さなボートで無人島へ。そこで息子は父親に怒りをぶつける。
ロシアといえば冬の風景ばかりが印象に残ってるが、映画の中の夏の空や草原は美しかった。松本人志は父親が12年不在にしていた理由を秘密にしたままのラストに納得できないとコラムに書いたそうだが、私はそれこそがこの映画の魅力だと感じた。父親の弱さを知ることなく共に過ごした一週間は息子たちにとっては永遠に等しい貴重な時となった。男が男になるための一番大切なツールは父親である。