『ふたりの5つの分かれ路』 ★★★1/2☆

冒頭は夫婦が離婚するところから始まり、その一、二年前のディナーパーティ→出産した日→結婚式の夜→出会いと5つの男と女の岐路をさかのぼってゆくストーリー。劇場から出てきた時、後ろを歩いてきた女性二人が「あんなこと絶対しないよねー。ありえなーい」と話していた。主人公たちがとった行動が極端だったにしろ、我々の毎日は小さな岐路の連続である。何気なくとった行動の積み重ねが人生を決めてゆく。いつも正しい選択ばかりしている人などいないわけで、間違い傷つき、それを繰り返さないように慎重になってゆくのが年をとることなのかもしれない。『焼け石に水』、『まぼろし』、そしてこの作品。フランソワ・オゾンは愛は不毛だと言いたいのではなく、エゴと愛の間に揺れ傷つきながらもなお追い求める強くて弱い人間を、その美しさを描こうとしているのだと私は感じた。
期待はずれだった『愛する者よ、列車に乗れ』では、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキマリオンの憂いのある美しさだけは印象に残っていた。今回は愛が始まり終わった時までの女の表情の微妙な変化を魅せてくれた。これからの出演作が楽しみな女優。