お酒日記


Tが美味い珈琲酎を出すスナックの話をしてくれたのは一年前のことか。大好きな珈琲と焼酎が合体したものが美味いときたら飲んでみたいと思うのは当然。念願かなって飲めることになったのだが、Tが私とHをまず連れていってくれたのは中野の鶏料理屋だった。この店でも美味しい珈琲酎が飲めるとのことで、生ビールの後、注文することにした。水割にしようとしたら、二人ともロックを頼むとのこと。そりゃ、ロックだよなと思い直して、私もロックを注文。
実は私もネットでレシピを検索して、二ヶ月前から珈琲酎を作ってみたのだが、この店で口にしたものとは比べものにならない。味だけではなく色が違う。うちで作ったものはすぐ真っ黒になったが、この店のものは琥珀色だ。琥珀色なのに珈琲の美味さが十分に出てなおかつまろやかだ。
美味いから、ついつい数杯飲んだ。そして店を出る頃には私もHもかなりの酔っ払いになっていた。それからTに沼袋のスナックに連れていかれた流れは今では覚えていない。記憶にあるのは、女性二人がカウンターにいるスナックでTが歌い、それに手拍子していたという断片的なシーンだけだ。Tはスナックの珈琲酎の方がより美味いと言っていたが、その美味さなど記憶にあるわけもない。
スナックを出た後、まだ飲むというTとHと別れ、私は沼袋駅に向かったのは覚えている。でも、その後、意識を取り戻した時、私は駅のホームに座っていた。景色がぼやけている。メガネをかけてないのだ。しかもスマホもない。
なんとかホームを下りて、改札まで行き、ここが花小金井で新宿行きの終電もすでにないことを教えてもらった。
駅から何十メートルの先にある交番まで歩いていこうとして、つまづき転ぶ。通りがかった人が声をかけてくれ、交番まで連れていってくれる。助けてくれた人の顔も警官の顔もぼやけて見えない。とにかく困るのはブリ夫と連絡が取れないことだ。紛失届を出し、「タクシー乗り場まで連れて行ってください」と頼むが、警官は「交番から離れられないので、声で指示します」と、タクシー乗り場まで口誘導してくれた。
マンションに着いたのはすでに3時半近く。ブリ夫に謝罪したとたん、気持ち悪くなりトイレで吐く。吐いていたら、ブリ夫が「もう、禁酒して。禁酒しないと離婚する」と後ろから言ってきた。これからは大人な飲み方をすると深く反省したのは6月のことだ・・・なんも言えねえ。